中国式英語勉強法

前に僕の研究室に配属していた、1個下の中国人留学生は
とても英語がうまい人でした。1個下なのに英語での交流会でも
英語のプレゼンテーションでも凄く積極的に行動できていて、
俺より若いのにこんなに英語が流暢に出来るのかよ反則だ、
だなんて何度も思ったものです。

彼は昨年の震災をきっかけに中国へ帰ってしまいましたが、
彼とは今でもFacebook上でメッセージのやり取りを続けています。

あるとき、僕は自分の英語能力が全然上達しないことに悩み、
次のようなPostを自分のページに投げました:

"""
(原文訳)

誰か、俺の英語のスキルを上昇させる方法について教えてくれる人いない?
長くても単純な文章なら比較的簡単に書けるし読める(と、思う)んだけど、
ひとたび少しでも文章が複雑になると、その文のある程度の意味すら
読み取れずに全く理解することができなくなるんだ。いい方法ないかね?
ここ数年、英文のオライリー本をずっと読み続けているけれど、
全然英語の能力が継続的に向上しているように感じられない....
""""

すると、その中国人留学生が丁寧にもこんなアドバイスをしてくれました。

"""
(原文訳)

君と同じく英語を母国語としない僕が行った、中国での英語の学習法が
少しでも君の役に立ってくれると嬉しい。

1. テスト。
TOEICより、多くの中国人の学生はより高度なテストである
TOEFL,IELTS,そしてGREの勉強をする。恐らく、これらの要求する
そのレベルの高さにより、彼らの英語のレベルが
引き上げられているのだと思う。

2.語彙。
GREを受けるには膨大な量の単語を覚える必要がある。
なので、短時間内に膨大な新しく覚えた単語の中から
適切なものを選択する能力は
GREではとても重要だ。この勉強が英語の能力を向上させるのに
もっとも重要だと僕は考えている。

3.構文。
君が十分な語彙力を持っていて、膨大な単語の中から正しい意味を
すばやく認知できるのであれば、新しい構文を覚えることは
長くて複雑な文章をすばやく理解するのにとても役に立つ。

4.時間。
GREでは60分の制限時間しかない。これはまた、英語の学習を
促進させるために特に重要だと僕が思っているものだ。
制限された時間内に答えるために、君は「英語を日本語に変換する」
という考え方から「英語で考える」という考え方へ強制的に
シフトさせられるだろう。

この中の1つや2つでも君の役に立ってくれたならとても嬉しく思う。
よき週末を!
"""

彼のメッセージを読んで、日本の(大多数の英語の学習者が行っている)
英語の勉強法の課題がかなり見えてきたような気がしました。

日本では,最近どこに行っても英語といえばTOEICで、
英語の勉強=TOEIC, 英語ができる=TOEICの点数が高い、
といったTOEIC崇拝のような文化ができてしまっているように思います。
つまり、すべての基準がTOEICになってしまっているのです。

しかし、TOEICは彼の言うような「とにかくたくさんの語彙を覚えないと点が取れない」
ような構成にはなっておらず、月によっては語彙が殆ど分からなくても
(副詞しか入らない部分に穴埋めをする問題で1択だけ --lyがある、とか)
解けてしまう問題が沢山出題されることもあります。

つまり、TOEIC=英語を使ううえで必要な能力すべてを測るもの ではない
というごく当たり前の事に気づき、TOEICで埋められない穴を埋めるような
勉強をしなさい、ということを彼は教えてくれたのだと思います。
(だから説明文上で、TOEICに明らかに抜けている"語彙の充実化"を
埋めるためのGREが何度も現れているのでしょう)

また、TOEICは世界的に見てもかなりベーシックなレベルのようです。
一般的にTOEIC800点(筆者は795点ですが...)はTOEICの高得点保持者、
というような認識をされるように思いますが、
1年前にその中国人にTOEICの公式テキストを数日間貸したところ、
「こういっちゃ悪いけれど、問題が単純過ぎてびっくりしたよ。
こんな問題が本当に試験に出たら中国の大学生は皆ほぼ満点を取れてしまうよ」
と言われて返されました。
(その後、「このテキストは公式が出している模擬テストだから難易度分量全部まんま
だぜ」と伝えたら苦笑いしてました (^^;
つまり、世界的なスコープで見たときに、TOEICが800点しか取れないというのは
英語がかなり不自由だと言われても仕方がないレベルだと考えられます
(実際、筆者もあらゆるシチュエーションでぺらぺら、
という訳にも行きませんし、確かにかなり不自由です。)

恐らくTOEIC700-800台の人にとっての残りの200-250点は
「複雑な構文の解読」や「マイナーな語彙の適切な選択」、
および「短時間での適切な選択」であるはずなので、
TOEICでより高得点を目指したい場合でも、早めに中国人の彼の言う勉強法に
切り替えたほうが効率がいいのかな、なんて思いました。

これからは、TOEICの本を読み漁ることはやめて、
当面はGREの勉強にシフトして英語の学習を進めてみようかなと思います。
また何か進展や気付いたことがあればこちらに書きます。